新千歳の大雪による混乱に思いをはせる
新千歳の大雪による大混乱!
みなさんこんにちは。
札幌新千歳空港では、ここ数日の大雪による大幅なフライトスケジュールの乱れが起きていますね!
欠航、遅延のオンパレードで空港には数多くの客様が取り残されたまま。
エアラインのスタッフもてんやわんやでご案内が錯綜し、怒れるお客様がスタッフに詰め寄る場面もしばしば見受けられ、そこはまさに地獄絵図・・。
雪には慣れっこと思われる札幌でいったい何故このようなことが起こってしまうのでしょうか?
その原因と舞台裏について今日は解説しようと思います。
雪が降っっても飛行機は飛べます
これは当たり前ですが、少々の雪くらい飛行機が飛べなくなるなんてことはありません。
世界中の雪国の空港では日夜飛行機が離着陸しています。
しかるべき気象条件を満たしてしかるべき準備をすれば、たとえ雨・風・雪の場合でも飛行機は安全に飛ぶことができるのです。
しかし、その限度を超えるような状況となってしまった場合には飛行機は飛べなくなってしまうのです。
雪が飛行機の翼に積もったら、飛ぶ前にその雪を溶かすディアイシングという作業が必要になります。
雪を翼に積もらせたまま飛行機は飛べません。
雪が固まって氷になったら翼の色々な部品が動かなくなってしまうからです。
また、翼以外の部分についても雪をしっかりと除去しないと様々な支障が起こってしまいます。
ですので、このディアイシングをしっかりと行って、翼やセンサー類が完全に機能するような状態にする必要があるのです。
そのために使われるのがディアイシングカーという特殊車両です。
この車両から氷を溶かす薬剤が機体に散布されて飛行機に積もった雪は溶かされるのです。
ディアイシングのためにはもちろん時間が必要です。
当然雪の降っていない日よりも出発準備に時間がかかります。
また、ディアイシングカーの台数もスタッフの人数も限られているので、最大限にやり繰りをしても大雪の場合にはどうしても時間が押してしまい、結果的に色々なフライトが遅延してしまいます。
気象条件の悪化が重なると更に・・
このディアイシングだけではなく、大雪による様々な気象条件の悪化も遅延の原因です。
出発しようにも視界がほぼゼロなんてことになれば飛行機を飛ばすことはできません。
もちろん視界が悪い夜間や少々の天候不良でも、飛行機には各種レーダーや計器だけで飛行できる仕組みになっていますが、それも決して無条件ということではありません。
一定の条件のもとだけでそれは可能なのです。
ですので、今回の新千歳の場合、大雪とそれに伴う強風や視界不良も大幅な遅延の原因となっています。
パイロットとCAのやり繰りもマヒします
通常国内線の場合、到着して法定休息時間(インターバル)を満たしたら、パイロットとCAはまた新たな目的地に向けて出発します。
地方空港の場合は大体到着した機材に乗って折り返し便となったり、違う目的地へ向けてのフライトとなります。
しかし、今回のような大雪による悪天候の場合は出発ができないので乗員はその場で足止めとなってしまいます。
また、後続のフライトが新千歳に着陸できないので、あっという間に後続の折り返し便の使用機材と乗員も居ないという悪循環に陥ってしまうのです・・。
そうなんです、飛行機の運航はまさに自転車操業なんです!
その時航空会社の地上スタッフには何が起こる??
こうなってしまうともはや空が職場のパイロットとCAの出る幕は無くなってしまいます・・。
私たちCREWはひたすら待機となってしまいます・・。
一方で物凄く大変になるのが地上のスタッフのみなさんです。
グランドスタッフ(GS)、整備士、ケイタリング(機内食)、ディスパッチ(運航管理)、みなさん徹夜状態となります・・。
特にお客様の対応に直接あたるグランドスタッフ(GS)はまさに地獄です・・。
大雪の時のグランドスタッフ(GS)の並々ならぬ苦労
いい加減にしろよ!
責任者誰だ!あっー!?
全額保証しろ!
テメェ、名刺出せやゴルゥアー!
数々の罵声がチェックインカウンターやゲートに鳴り響きます・・。
・・私は本当にグランドスタッフ(GS)のみなさんを尊敬してしまうのですが、たとえお客様に怒鳴られてもなじられても皆さん決してひるまないんです!
私なんて機内でちょっとでもお客様にすごまれたら震えあがってしまうのに・・。
下手に出ながらも理路整然と振替便や払い戻しのご案内を粛々とやってのけるGSさんには正直かないません!
何て逞しいんでしょう・・。
また、振替便にご案内といっても機材とCREW不足でその便は大幅にオーバーブッキングしているわけです。
ですので、お客様の中から2日後のフライトに移れる方を探し出したり、新幹線への振り替えが可能な方を数百人も見つける必要があるんです。
この大混乱でイライラMAXのお客様に対して、まさに火に油を注ぐようなことをしなければならない、とても過酷な業務なんです・・。
大いなる大自然の前に人間は無力なりけり
今回の新千歳の件に限らず、大自然には逆らえないということを、どうかお客様にご理解いただきたいと切に思います・・。
もちろんお客様もそれは百もご承知とは思います。
しかし、いつになったら出発できるのかわからないという状況が長く続き、挙句の果てに空港で夜を明かすことになっては、たとえ普段は温厚な方でもふとしたきっかけで激高なさることがあるのでしょう。
しかし、どうかそこは今一度冷静になってください。
可能な限り早くお客様を目的地にご案内できるよう、我々航空会社のスタッフは徹夜で対応させていただいておりますので・・。
特に、私たちの大切な同僚、グランドスタッフ(GS)に辛く当たらないでください。
お願いします。
GSはそれこそ目の前のお客様のことを第一に考えて空港内を徹夜で駆け回っているのです・・。
もしお客様が有名な方でしたら、そんなGS達のことをSNSで悪く言うようなことは絶対にやめていただきたい!
人間は大いなる大自然の前には無力なのです。
それに抗うことを挑戦であるとおっしゃるのであれば、私は敢えてこう反論します。
それは無謀だと。
お急ぎであることは重々承知しております。
どうか、ここはひとつ大自然の前に謙虚になり、私の大切な同僚に対しても同じ地球に生きるひとりの人として尊重してください・・。
なにとぞ、よろしくお願いいたします。